キルトカフェホームお茶にしませんか展示会リポート

No. 050「エドリカ・ヒューズパッチワーク絵展」を見て

10月10日(火)から16日(日)まで、東京の池袋三越で「エドリカ・ヒューズパッチワーク絵展」が開催されました。キルトジャパンの11月号に関連記事が掲載されていますが、百聞は一見に如かず。エドリカ・ヒューズの世界をたっぷり堪能してきました。今回は、そのリポートをおとどけしたいと思います。
エドリカ・ヒューズは、1907年にイギリスで生まれ1999年92歳で亡くなりました。父は建築家、叔母は画家といった環境の中で育ち、芸術家の夫と結婚しました。自身も美術学校で壁画装飾を学んでいます。50歳になってからパッチワークを始め、亡くなる直前まで作品を作り続けていました。

日本では今までに、ザ・ギンザ資生堂ギャラリー、たち吉ギャラリー、千疋屋ギャラリーなどで展覧会が開催されています。ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。文化出版局からも「エドリカ・ヒューズパッチワーク絵」が出版されています。

エドリカ・ヒューズパッチワーク絵展
さて、会場に入るとまず、エドリカ・ヒューズが使っていたハギレの一部が展示されていました。緑、黄、ピンク、青、茶、白と水色、黒、赤の8つに分類されていて、いずれも透明なプラスチックの箱に無造作に入っていました。

緑は植物や草のイメージ、黄色はスタッコ(化粧しっくい壁)のイメージ、ピンクはお花のイメージ、青は小石のイメージ、茶は羽のイメージ、白とブルーは空のイメージ、黒はドミノ(黒と白)、赤はいろいろな赤といった具合です。基本的に単色は使わずに、すべてが柄布です。実際にはイメージごとにもっと細かく16の袋に分類されていたようです。

いったいどんな柄のハギレがあるのだろうと興味シンシンの私は、顔を箱に近づけて目を皿のようにして見てしまいました。チェックやストライプ、花柄に幾何学模様、大柄から小柄まで、濃い色から薄い色まで、ありとあらゆるハギレがつまっていました。

これらのハギレをいったいどうやって使うのだろうと、顔をあげて最初の作品を見た瞬間でした。ものすごいショックを受けました。


パッチワーク絵というと、たとえば風景画なら家や木の形を切り取ってアップリケするといったものを想像しますが、それとはまったく違ったものでした。後で図録を読んでみると「モザイク」といった言葉を使っていました。5〜6cmほどの大きさのモザイクをしきつめて表現するといった感じが一番近いようです。

しかる場所にピッタリの布を選びだし、モザイクのように切り取ってしきつめ、ピンでとめます。しつけはかけずに、ほんの少し重ねながら縁をかがります。そしてアイロンをかけて整えます。気が遠くなる作業です。とても忍耐が必要です。下絵は書かず、スケッチした絵や写真を見ながら描いていきます。

はじめは使われている布ばかりに目をうばわれて、近くから見てばかりいました。何枚か見終わって後ろを振り返ったその時です。またもやものすごいショックを受けました。

近くから見ているだけでは分からなかったものが、はなれて見てみることによって、全体がハッキリと見えてきたのです。

近づいて見ては「ためいき」、ちょっとはなれて見ては「ためいき」、遠くから振り返って見ては「ためいき」、また近づいて見ては「ためいき」。この妙な行動に気がついた方に、ふいに声をかけられました。「いかがですか?ご覧になって。素晴らしいでしょう!」と。今思うと、きっと主催者側の関係の方だったにちがいありません。


壁にかけられている作品はすべて、額にいれられていました。大きさはキャンパスに描く絵画とほぼ同じです。パッチワークに興味がない方でもじゅうぶんにその魅力を堪能できるかと思います。豊かな色彩と構図が見事です。

人物画もありましたが、やはり人物を描くのはなかなかむずかしかったようです。ウェールズ、ロンドン、リヴァプール、オックスフォード、パリなどの景色や建物、四季おりおりの美しい街並みなどの風景画が多く、自然の美しさが見事に表現されています。

身近なものを題材にした静物画も多くみられました。日差しが差し込む温室のガラス、窓辺にそよそよとゆれるカーテン、いきいきと花瓶に生けられた花などなど。それらのすべてが「布」で表現されているのです。

チケットに掲載されていた作品「ビオラ」には、ヴァイオリンと楽譜が描かれています。楽譜の音符はもちろん、音符の柄の布を使っています。刺繍やステンシルなどはいっさい使っていません。

どの色を使うかはあまり重要ではなく、色調が大事であると言っています。必ずしも、そのものズバリの色を使わなくてもいいのです。その曖昧さが見る側の想像力をかきたてます。とにかく、涙が出るほど感動してしまいました。これこそ「布をいかしたパッチワークの原点」なのかもしれません。


最後に話は突然かわりますが、私が小学生のころに図工の時間で作った作品の中に、レモンを描いた作品があります。といっても絵の具で描いたわけではなく、細かく割ったタイルをしきつめて貼ったものです。緑のテーブルクロスの上に置かれた白いお皿にレモンが2個のっています。

テーブルクロスには、抹茶のような濃い緑に若草色の明るい緑、そしてメロンのような薄い緑の3種類。レモンには、いわゆるレモンイエローと暗いオレンジの2種類。そしてお皿には、白と水色がかったグレーの2種類。あわせて7種類のタイルを使っています。

緑のテーブルクロスの奥行きや、レモンの立体感、そしてレモンを置いたときにできる白いお皿の影などを、子供ながらに表現したかったようです。なぜか、イニシャルまで入っています。とても気に入っています。

2000年10月19日

キルトカフェ 展示会のリポートです。
キルトカフェは2005年3月1日にオープンしました。