今回は、9月8日から9月13日まで、東京の渋谷東急本店で開催されましたキルトフェスティバル’99を見てきた感想をご報告したいと思います。私は、12日の日曜日の朝一番に行ってきました。開店と同時に、会場のある7階へまっしぐら!さすがにまだ人は少なく、ゆっくりと見ることができました。
まず会場に入ると、野原チャック・アンティーク・コレクションの中の「サーティーズ・キルト」が展示されていました。もちろん、チケットの写真のキルトもありました。タイトルは「Flower Basket」。とにかくお花のアップリケが可愛い!植木鉢の上に5本の花が咲いているバターンです。茎がミョーに太くて、そこがまた可愛いらしいのです。写真では、ボーダーとラティスに使われている布が、かなり鮮やかなオレンジ色でしたが、さすがに実物は、いい具合に色がさめていました。
隣りには、やはりお花のアップリケがしてあるキルト「ソロモンの庭」です。こちらは、ボーダーとラティスには黄色の布が使われていました。コーンクリームスープの色です。よく見てみると「Flower Basket」のお花も「ソロモンの庭」のお花も、花びらが5枚ずつありますが、布のとり方にちがいがありました。
「Flower Basket」のお花は、5枚の花びらがつながっています。お花のかたちをそのまま型抜きのようにしてピースをとっています。
それに対して「ソロモンの庭」のお花は、5枚の花びらを1枚ずつ円形にとって、順に重ねてアップリケをしています。どうして5枚の花びらが同じ模様なのか、不思議に思ってよく見てみたのです。1枚の布の中から同じ部分をワンポイントにして、中心にくるようにピースをとっています。こうした発見は、とてもうれしいものです。
もうひとつ、印象に残ったキルトは「コロニアルレディ」です。優雅に立っている女性をアップリケにしたパターンですが、今まで見たことがありません。その女性は、大きな襟のついたドレスを着ていて、スカートはペチコートで広がっています。つばの大きな帽子をかぶり、日傘をさして立っています。ドレスと帽子と日傘に使われている布は、柄布と無地の布2種類をうまく組み合わせています。細かな部分は、黒の刺繍で表現してありました。
縦横6個ずつ、合計36個のブロックからなっていますが、ひとつとして同じ組み合わせのものはありません。アップリケの土台となる布は無地で、白が黄ばんでしまったか、もともとベージュだったか、シンプルすぎるほどシンプルで、それが逆にアップリケの女性を引き立たせていました。まさしく「風とともに去りぬ」のスカーレット・オハラを思いださせるキルトでした。
ヨーヨーキルトもありました。ヨーヨーキルトは、今までこのような展示会ではあまり見た記憶がなかったように思います。柄の布で作ったヨーヨーを縦横5個ずつつなげたものを1ブロックにして、クリーム色の無地の布で作ったヨーヨーで、つないでいました。裏布をつけないので、キルティングをしないヨーヨーキルトは、とても涼しげです。使われている布は、当時の布が勢ぞろいといった感じで、とても可愛いキルトでした。
ほかにもまだまだありましたが、どれも穴のあくほど見てもあきないキルトばかりでした。アンティークキルトといわれるキルトは、使われている布の種類もそれほど多いわけでもなく、単純で素朴なものがほとんどです。どうしてそのようなキルトが、何十年たった今でも見る人をひきつけるのでしょうか?魅力あるキルトとはいったい何なのか、う〜ん!ますますわからなくなってきます。
次にハーツ&ハンズキルトショーの作品についての感想をお話ししたいと思います。すべてベッドカバーサイズのキルトで、なかなか見応えがありました。「すごい!」と思う作品は、やはり賞を受賞した作品だったりします。私の作品などはとてもおよばない、オリジナリティゆたかで、技術的にもすぐれたものばかりでした。
狭い会場のスペースを有効に使うため、壁に展示するだけでなく、空間を利用して天井からつるしたりと、数多くのキルトを展示するための工夫もなされていました。そのおかげで、あまり見ることのできないキルトの裏側を見ることができました。
裏布にどんな柄の布をもってきているか、たいへん興味深いものがあります。「うんうん、なるほど!」とうなずけるのものから「大胆すぎないかしら?」と思うものまで、裏布にもそれぞれ特徴がでていました。すべてのキルトの裏側を見たわけではありませんが、さすがにコンテストに出展する作品です。無地の布を使っているものはおそらくなかったと思われます。
キルトの裏側といえば、ループです。どのようなループをつけているかを見る絶好のチャンスです。のれんのようにつけているものはなく、上辺全体に筒状につけられていました。どのループも裏布と同じ布を使い、同じ太さでした。指定されていたのかもしれません。
さて、かんじんの表側の方ですが、30年代を意識した布選びや配色のキルトが何点かありました。当時の布を使っているものあれば、復刻版を使っているものもあり、どんな布を使っているかを見てるだけでも楽しいものです。イエローにオレンジ、青に赤、きみどりといった色をカラフルに使い、あきらかに30年代を意識しているように思いました。これでもかと思うくらいに、ふんだんに使っている布の中で、なぜか白の水玉模様が印象に残ったのが不思議です。
会場を出る前に図録を購入しようと、パラパラとページをめくってみると、まだ見ていない作品が目に止まりました。見逃したのかもしれないと思い、会場を何回も見てまわったのですが、やはりみつかりません。どうしても見てみたかかったので、受付の方に聞いてみると、作品の入れ替えが1度あったそうです。その作品は前半に展示されていたものらしく、残念ながら写真でしか見ることができませんでした。ということは、図録に載っている作品を全部見るためには、開催期間の前半と後半と2度見なくてはならなかったわけです。
大きな展示会には、キルトショップが同時に併設されていて、買い物ができるようになっています。興奮も冷めぬまま会場を出ると、すでにキルトショップはたくさんの人でにぎわっていました。最近は、あまり見ることもなかったのですが、今回は布を中心に見てまわりました。
アンティークの布を扱っているお店が、意外と多いことにビックリしました。たしかに魅力があります。コレクションしたくなるものばかりです。でもやはり、高いです。実際にキルトを作るのなら、復刻版でじゅうぶんだなっと思いました。
その復刻版の布からちょっと前の布まで豊富に揃っているお店がありました。すべて50cm×50cmのカットクロスで、値段は450円です。すっかり30年代のキルトに影響されてしまった私は、復刻版の布が欲しくなります。見れば見るほどあれもこれも欲しくなってしまい、気がついたら何枚も手にしていました。その時です。となりから「何を作るかも決めていないのに、布だけ買ってもねえ〜。」という友達同士らしき会話が聞こえてきました。「そうだった!」その言葉で我にかえった私は、買うのを思いとどまりました。
ひさしぶりにたくさんの布を見た私は、それでもなにか買いたくてしかたありません。よくよく見ると、ちょうど私がキルトをはじめたころ、夢中で集めていた布がたくさんありました。気に入っていた布が、残りわずかになってしまっていたので、感激しました。まえまえからさがしていた布が何枚もあって、助かりました。おまけに9月30日から東京の日本橋高島屋で開催される「パッチワーク・キルト展」の招待券までもらえて、得した気分です。
アンティークのシンブルを置いてあるお店もありました。気をつけて見ていないと、見過ごしてしまうところでした。陶磁器のものから真鍮のものまで、値段も2,500円から6,000円、8,000円までと、いろいろです。アンティークのシンブルは、何点かからなるシリーズものが多く、ちょうどさがしているものがあれば、とてもラッキーです。「エリザベス女王の結婚を記念したシンブル」などといったメモリアルシンブルを集めるのもおもしろいです。時間をかけてひとつひとつ見てみましたが、あまりピンとくるものがなかったので、今回はあきらめました。
数えきれないほど見てきた数多くのキルトの中から、記憶に残るキルトは決していつまでも忘れることがありません。この忘れられないキルトたちが、これからの自分のキルト作りの参考になるような気がします。実際に「キルトフェスティバル’99」を見てきた方は、「ああ!あのキルトのことだ!」と思っていただけたかと思います。そうでない方にとっては、なかなか文章だけで説明するのはむずかしいものです。図録があるので、写真をスキャンして紹介したいところですが、そうもいきません。このような展示会をインターネットで見れるようになるといいのですが・・・。せめて図録の購入ができるようになれば、と思います。
1999年09月19日
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