さて、券売機でチケットを買い、美術館の中に入っていきます。最終日ということもあってか、あまり人も多くありませんでした。館内にはめずらしく音楽が流れていて、ゆっくりと見ることができました。あまり状態のよくないものもあって、かなり照明はおとしてありました。決して手で触らぬように注意書きがしてあり、キルトに顔を近付けて見ようとすると、係の人がさりげなく近寄ってくるといった感じでした。それほど希少価値の高いキルトということだと思います。
まず最初に展示されていたキルトは、チンツという生地を使ったものでした。チンツとは、光沢のあるちょっと厚手の生地で、当時としては、かなり高価な生地だったようです。柄は、植物や鳥などの大柄が多く、これらを「絵」として切り抜いて、白い布地にかがりつけています。いわゆるアップリケです。土台の白い布には、びっしりとキルティングがされています。
展示されいるキルトのほとんどが、2m以上もあろうかというサイズのものばかりなので、まずその大きさに圧倒されます。そして1枚1枚じっくり見ていくと、次にその細かさにショックを受けます。「なんて細かいんでしょう!」とささやく声があちらこちらで、聞こえてきました。複雑に入り組んだチンツの柄を切り抜くことは容易なことではありません。アップリケも細かければ、キルティングも細かい。とにかく細かいんです。図録では「精密」という言葉がよく使われていましたが、まさにその通りです。
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