キルトカフェホームお茶にしませんか展示会リポート

No. 027 「ボルティモア・アルバムキルト展」を見て

12月1日〜27日までの間JR千葉駅前にある千葉そごう美術館でボルティモア・アルバムキルト展が開催されました。なんとか最終日に見に行くことができたので、今回は、見てきた感想をお話ししてみようと思います。こちらが「The Baltimore Album Quilt Tradition〜ボルティモア・アルバムキルト展」の図録です。
その前に、みなさまボルティモア・アルバムキルトをご存じですか?ボルティモアとはアメリカ東海岸のメリーランド州にある都市の名前です。アルバムキルトとは、複数の人達によって作られたブロックをつなぎあわせたキルトのことをいいます。1840年代から1850年代にかけて、この地域で作られたこれらのキルトをボルティモア・アルバムキルトといいます。特徴は、豪華なアップリケです。結婚などのお祝い、何かの記念や感謝の気持ちを贈るために作られたものがほとんでなので、キルターの名前やメッセージ、日付などが刻まれているということも特徴です。

さて、券売機でチケットを買い、美術館の中に入っていきます。最終日ということもあってか、あまり人も多くありませんでした。館内にはめずらしく音楽が流れていて、ゆっくりと見ることができました。あまり状態のよくないものもあって、かなり照明はおとしてありました。決して手で触らぬように注意書きがしてあり、キルトに顔を近付けて見ようとすると、係の人がさりげなく近寄ってくるといった感じでした。それほど希少価値の高いキルトということだと思います。

まず最初に展示されていたキルトは、チンツという生地を使ったものでした。チンツとは、光沢のあるちょっと厚手の生地で、当時としては、かなり高価な生地だったようです。柄は、植物や鳥などの大柄が多く、これらを「絵」として切り抜いて、白い布地にかがりつけています。いわゆるアップリケです。土台の白い布には、びっしりとキルティングがされています。

展示されいるキルトのほとんどが、2m以上もあろうかというサイズのものばかりなので、まずその大きさに圧倒されます。そして1枚1枚じっくり見ていくと、次にその細かさにショックを受けます。「なんて細かいんでしょう!」とささやく声があちらこちらで、聞こえてきました。複雑に入り組んだチンツの柄を切り抜くことは容易なことではありません。アップリケも細かければ、キルティングも細かい。とにかく細かいんです。図録では「精密」という言葉がよく使われていましたが、まさにその通りです。


さて、ゆっくり進んでいくと、今度はチンツとピーシングをした「ベツレヘムの星」を組み合わせたキルトが展示されていました。正確にピーシングされた「ベツレヘムの星」に、切り抜かれたチンツのアップリケ、白い空間には細かいキルティング。万華鏡をのぞいたような幾何学的なこの星は、メリーランドの人たちに好まれたようです。

いよいよ、これぞ「ボルティモア・アルバムキルト」というキルトが登場します。配色は、白地に赤と緑のアップリケが基本ですが、その限りではありません。黄色や青が追加され、チンツに加えて無地やキャリコの生地も使われています。パターンは、植物のリースや果物にバスケット、建物や船、アメリカの象徴である鷲に旗、平和のシンボルである鳩などなど、多彩です。アップリケは布を幾重にも重ねて厚みをだしています。布をクシュクシュ巻いて作るルーシングといった手法も使われています。

とにかく細かいという言葉は「耳にタコ」ですが、なんといっても全体のバランスが素晴らしいんです。とにかく2m以上はあろうかという巨大なキルトです。広げる場所があるだけでもうらやましいかぎりですが、これだけ大きいと、全体のバランスをとるのが難しいはずです。しかし、どれも見事にバランスがとれています。


何枚も続く「ボルティモア・アルバムキルト」を見ていくと、前にいた人がチケットを見ながらキョロキョロしているのに気が付きました。はたしてチケットに載っているキルトはどれなのか、さがしているようです。そう言えば忘れていました。私もチケットを出して、そのキルトをさがしてみました。右も左も前も後ろも巨大な「ボルティモア・アルバムキルト」だらけで、どれがそのキルトなのか、パッと見渡しただけでは分かりません。何度も何度もチケットと見比べながら、やっと見つけると「これだ!」と思わずつぶやいてしまいました。

最後のコーナーでは、1ブロックを復刻したキルトが何枚か展示されていました。たしかに正確に復刻されてはいますが、なんとなくピンとくるものがありませんでした。やはり、歴史の重みと時の流れがそう感じさせるのでしょうか。キルトを見る時、その時代の背景を知っていると、また違った角度からキルトの魅力を知ることができます。これを機会にキルトの歴史について、もっと勉強してみようかなっと思いながら、出口へと向かいました。


さて、お決まりのその後のお買い物です。図録はもちろん、かねてから欲しかったシェルバーン美術館に展示されている55枚のキルトの写真集があったので、ゲットしました。いつかは、この目で実際に見てみたいものです。「ボルティモア・アルバムキルト」のモチーフが入った一筆便箋のメモ帳が可愛いかったので、4種類ある中から1種類を2冊ゲット、以上でした。

キルトジャパン1999年11月号に、「ボルティモア・アルバムキルト展」に関する記事が掲載されています。

1999年12月29日

キルトカフェ 展示会のリポートです。
キルトカフェは2005年3月1日にオープンしました。