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No. 031「ミュージアム・オブ・アメリカン・フォークアートの世界展」を見て〜前編

今回は、3月9日から14日まで東京日本橋高島屋で開催されている「ミュージアム・オブ・アメリカン・フォークアートの世界展」のリポートを2回にわけて、おとどけしたいと思います。ニューヨークの中心地にあるアメリカン・フォークアート美術館には、およそ400枚以上のキルトが納められているそうです。今回はその中から29点が展示されていました。
作品はすべてベッドカバーサイズの大きさで、年代順に展示されていて、キルトの流行のながれを見ることができました。ラッキーなことに、アメリカン・フォークアート美術館のエリザベス・ワレンさんが作品の説明をしてくださる時間と重なり、彼女の説明を聞きながら、ひとつひとつ興味深くキルトを見ることができました。

そのまえに、まず受付です。以前にもお話ししたことがありましたが、でました!筆です。入り口に受付があって、記帳するようになっていましたが、そこにまたもや筆がありました。硯もありました。よく見ると筆ペンも置いてあったので、もちろん迷うことなく筆ペンで記帳してきました。


さて、中に入るとまず、ホールクロスキルトが2点展示されていました。ひとつは、黒でちょっと光沢のある生地を使っていました。もうひとつは、白でまわりにフリンジの縁取りがしてあって、スタッフィングとキルティングがとても美しいキルトでした。ホールクロスキルトとはご存知のとおり、1枚の布だけからできているキルトで、ピーシングはなく、キルティングのみです。ワレンさんの話しによると、これだけの大きさの1枚布を使うことができるということはとても贅沢なことで、かなり裕福な家であったのではないかと思われるそうです。なるほど・・・。

次は、チンツのキルトが2点展示されていました。チンツのみで作られているのではなく、ピーシングと組み合わせたり、ボーダーに使ったりと工夫されていました。チンツも貴重な生地であったため、大切に使われていたと思われます。

そして次は、シグネチャーキルトが2点展示されていました。フレンドシップキルトまたはアルバムキルトと呼ばれるキルトです。複数の人々によって作られるもので、結婚の記念や餞別に贈られることがほとんどです。作者の名前がそれぞれ刺繍やペンなどで書かれています。1枚は、バルチモア風のアルバムキルトで、よく見ると虫食いの跡があって、広がらないようにきちんと当て布をあてて、かがってある個所がいくつかありました。

そして次は、アップリケキルトが1点展示されていました。「ウィッグローズ」または「シャロンのバラ」と呼ばれるパターンです。私の大好きなパターンです。白地にステッチされているキルティングの美しさが、ひときわ目をひきます。キルティングのステッチは、細かく複雑なほど美しい!


キルトトップのみの作品が1点展示されていました。極楽鳥のアップリケが使われています。ほかにも馬や鳥などの動物のアップリケが使われています。それらは皆、つがいになっていることから、結婚のお祝いのために作られたようです。なぜ完成しなかったのでしょうか?ワレンさんの説明によると、女性のアップリケのとなりに男性が見られないことから、おそらく結婚を目のまえにして男性が亡くなってしまったようです。ちょうど時代は、南北戦争のころです。はじめは、ただ何気なく見ていましたが、なるほど・・・。

さて次は、おなじみのピースドキルトが2点展示されていました。そのひとつは、私の大好きな赤と白のキルトです。この赤は「ターキーレッド」と呼ばれ、色があせないということでとても人気があったようです。「フェザースター」のパターンを使ったシンプルなデザインですが、白地にステッチされているキルティングは、どこまでも細かく丁寧で、とても美しいキルトでした。もうひとつは、ワンパッチのキルトです。スタンプキルトとも呼ばれるもので、正方形のピースをつなげたものです。全体は茶系でまとめてあり、濃いピースと白っぽいピースを交互に並べてあります。とにかく使った布の種類の多いこと!集めた布をあますことなく使えるこのパターンは、おすすめです。いつかは作りたいと、私も集めた布はかならず正方形にカットしてあります。


さてさて次は、やはりありました!ログキャビンのキルトが3点展示されていました。ひとつは「明暗」のパターンを使ったキルトで、やはり中央のピースは赤でした。「裁判所の階段」「ベツレヘムの星」といった有名どころのパターンがつづきます。「裁判所の階段」のキルトは、白地に茶系の配色で、男性のシャツを使って作られたものだそうです。「ベツレヘムの星」のキルトは、シルクを使っていて、あきらかに見せることを意識して作られたようです。ログキャビンはやはり、いかにもアメリカンキルトらしいキルトといえるパターンです。

次は、クレイジーキルトが1点、サンプラーキルトが1点展示されていました。サンプラーキルトは、私の大好きな1930年代のキルトです。「ダブルウェディングリング」のパターンを中央に、「バスケット」のパターンや「ナインパッチ」「シャロンのバラ」などの伝統的なパターンが1枚のキルトに配置されていました。配色は明るく、にぎやかです。

そして、イングリッシュフラワーガーデンのキルトが展示されていました。白地に緑とオレンジを使った配色に特徴があります。ボーダーのコーナーには緑と白のワンパッチ、植木鉢には緑の大きなブロックチェック、ラティスには緑の小さなブロックチェック、茎と葉には緑の無地、お花の中心にオレンジを使っています。白地にステッチされているキルティングが美しいキルトでした。

大胆な色使いのアフリカンキルトが2点、コンテンポラリーキルトが2点展示されていました。コンテンポラリーキルトのひとつは、絵の具のかわりに布で絵を描くといった感じがピッタリのキルトでした。描かれているのは「自由の女神」でした。これらは絵キルトと呼ばれたりもします。

そして、最後にアーミッシュキルトが9点展示されていました。アーミッシュキルトについては、ここでは語りきれないほど、奥の深いものがあります。ワレンさんも大変好きだと言っていました。長くなってしまいましたので、今回はここまでとさせていただきます。


この「ミュージアム・オブ・アメリカン・フォークアートの世界展」は、東京をはじめ、他3カ所の高島屋で順次開催されるようです。詳細は、

東京・3月9日(木)〜14日(火)東京高島屋。
京都・3月23日(木)〜28日(火)京都高島屋グランドホール。
大阪・3月30日(木)〜4月4日(火)まで、なんば高島屋グランドホール。
横浜・4月6日(木)〜4月11日(火)まで、横浜高島屋。
入場料は無料です。

いかがでしたでしょうか。アメリカンキルトの歴史もいっしょに見ることができ、大変勉強になりました。次回は、アーミッシュキルトとゲットしたシンブルをご紹介したいと思います。

キルトジャパン1999年11月号に、「アメリカン・フォークアート美術館」に関する記事が掲載されています。

2000年03月09日

キルトカフェ 展示会のリポートです。
キルトカフェは2005年3月1日にオープンしました。