No. 039「英国キルト300年展」を見て

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キルトの発祥の地といえば、みなさま、イギリスです。「北イングランド」、「イングランド」、「ウェールズ」の3つの地域で、それぞれに特徴のあるキルトが生まれました。ここで生まれた伝統とともに、多くの人々たちがアメリカ大陸へと移住してきたわけです。現在のアメリカン・パッチワークキルトのルーツがそこにあります。

今回は、6月8日(木)〜14日(水)まで、東京上野松坂屋で英国キルト300年展を見てきましたので、そのレポートをお届けしたいと思います。

まず、北イングランド。目をひいたのが、赤と白のキルトです。布に柄はなく無地です。リバーシブルのキルトが、空間をしきるようにさがっていました。一方は、白地に赤い四角形が紙ふぶきを散らしたように、あちらこちらにアップリケされています。一方は、赤と白の太いストライプです。かなり分厚いキルトでしたが、見事にキルティングされていました。

他にも、無地の布を使った、シンプルでしかも大胆な配色のキルトが何点かありました。それらは、装飾用というよりも、暖をとるための実用的なキルトといった感じで、素朴であったかそうで、そしてちょっと重そうな感じでした。

次に、イングランド。こちらは、うってかわって、豪華で凝ったキルトが登場します。 なんといっても目玉は、チケットにも掲載されている「貴婦人の宮廷キルト」です。シルクとベルベッドが使われていて、凝った刺繍にアップリケなど、溜め息がでます。縦4つ横3つのブロックをラティスでつなぎ、まわりにはボーダがついていたであろうと思われますが、現在は1辺しか残っていません。そのボーダーが見事でした。

ボーダーやブロックに貴婦人や宮廷で暮らす人々が、数多くアップリケされていました。「チケットに載っているこの貴婦人はどこ?」と思いながら、ひとつひとつブロックを見ていきます。まるで宝さがしのようでした。ガラスのケースの中に静かに広げられたこのキルトは、1680年から1700年に作られたものではないかと推測されています。最古のキルト?かもしれません。とても貴重なキルトをこの目で見た、といった満足感でいっぱいになりました。

軍服を使ったキルトは、刺繍やビーズを使った、とても凝ったものでした。はじめは、戦死した人たちの軍服で作られた悲しいキルトかと思いましたが、説明文を読んでビックリ!なんと負傷した戦士たちが、療養中の病院で作ったキルトだったのです。あらためて見直してみると、勲章や王冠などのアップリケが見られます。素材はウール。優雅さというよりも、力強さ、忠誠心が感じられました。男の人も、手先が器用?だったのです。

ガラスの向こう側に展示されていた、着物のような形をしたキルトは、見事なホールクロスキルトでした。ホールクロスキルトとは、ピーシングのない1枚布をキルティングしたキルトのことで、そのキルティングが見事でした。素材は、シルク。1700年ころに作られたということです。今から300年前です。「よくぞ、残っていた!」と誉めてあげたくなりました。

ところで、着物のような形のキルトをよく見かけると思いますが、おもしろいと思ったこと、ありませんか?どうして四角ではなくて、アルファベットの「t」字形をしているのか、はじめは不思議でした。これらは、天涯のついたベッドや、四隅に柱がついているベッド用です。柱があるために、切れ込みを入れてたれさがるようになっています。たれさがる部分が大きいということは、それだけベッドが高いということで、ということは、それだけお金持ち?と思われます。

そして、ウェールズ。こちらでは、ピーシングのキルトが多く登場します。配色や構図などから、それらは、アーミッシュキルトを連想することができます。事実、ウェールズ地方に住む人々は、職を求めてアメリカ大陸へと渡ったのです。現在もっともアーミッシュの人々が多く生活しているペンシルバニア州です。そして、アーミッシュの人々に、影響を与えたようです。

最後に、現在を代表するイギリスのキルト作家たちの作品が展示されていました。こちらは、キルトというよりも全くの別もの、「アート」「創作」の世界といった印象でした。何点か、印象に残ったものもありましたが、すでに頭の中は、それまで見てきたキルトたちでいっぱいです。さらっと見て終わりにしてしまいました。

さて、今回もキルトマーケットが同時に開催されていました。最近は、ちょっとチエがついてきて、初日の開店時間にあわせて出かけるようにしています。まず、マーケットをチェック!シンブル、フィードサックなどの1点ものを見つけます。開店直後は、きれいに整頓されているので、気持ち良く見ることができます。

いつも真っ先にチェックしているお店で、またまた、気になるフィードサックを2枚、ゲットしてきました。

左側は「子供柄のフィードサック」です。値段からしても、ちょっと貴重な柄かもしれません。はっきり言って、高かったです。右側は「ラベルがついたフラワーサック」です。残念ながら、縫い目がほどかれていていましたが、紙のラベルがついたままの状態だったので、こちらも迷わずゲット。前々から、ラベルが貼ってあるフィードサックをさがしていたので、見つけた時はかなり興奮してしまいました。写真がそれです。写真をクリックすると、拡大して見ることができます。

コレクションシンブルは、残念ながら今回も目新しいものはありませんでした。

パッチワーク・キルト通信2000年6月号に、「英国キルト300年展」に関する記事が掲載されています。

2000年06月19日

つづいて次のコラムもどうぞ。

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キルトカフェは2005年3月1日にオープンしました。