キルトカフェホームお茶にしませんか展示会リポート

No. 059「日米フックド・ラグ展」を見て

みなさまフックド・ラグをご存知ですか? 西部開拓時代のアメリカでは、キルトと同じように生地をリサイクルして作られたのがフックド・ラグです。 キルトは綿の生地をつぎはぎしてキルティングしたものですが、このフックド・ラグは、ウールの生地を5mm幅に細く切り裂いて、目の粗い麻の布(当時は丈夫な穀物袋をリサイクル)に、かぎ針でループ状にフックして埋めていきます。

2月1日(木)〜2月13日(火)まで、東京銀座で日米フックド・ラグ展が開催されています。さっそく見てきましたので、そのリポートとあわせて、今回は、このフックド・ラグの魅力と「リサイクル」について、お話ししてみたいと思います。

「日米フックド・ラグ展」では、日米の作家が作った作品42点が展示されていました。画廊で開かれる絵画の個展のように、こじんまりとした室内にひとつひとつ作品が壁にかけられていました。

作品は、一辺が50cm以内の大きさがほとんどでした。デザインは自由で、思い出に残るシーンを写実的に表現したり、伝えたいメッセージを抽象的に表現したりなどなど。キルトでいうと、絵キルトなどの創作キルトやコンテンポラリーキルトといったところでしょうか。

原色を使ってはっきりくっきりした作品もあれば、絵の具のように中間色を自由自在に使った作品もあったり。色のグラデーションを使って立体的に表現したり、遠近法を取り入れて表現したり、まるで絵画のようでした。

ループの埋め方も、直線に埋めていったり輪郭にそって埋めていったりと、埋め方も表現のひとつです。ループの幅も細ければ細いほど、なめらかな線や微妙なグラデーションを表現することができます。

素材がウールということもあってか、どの作品も素朴で暖みがありました。部屋の壁にちょこんと掛けてあったら、素敵だナッと思いました。

当時のラグが一枚だけ入口に展示されていました。玄関マットとして使われていたものと思われます。踏み固められたためかペチャンコになっていました。当時のフックド・ラグのほとんどは、玄関マットなど主に敷物として使われていたようです。そのため痛みがはげしくて、当時のものはほとんど残っていないようです。


作品の展示の他に、室内の一角にテレビが設置されているコーナーがありました。そこでは、NHKのおしゃれ工房に出演された時の小林恵さんのビデオが、放映されていました。リアルタイムでご覧になった方もいらっしゃるかと思います。ゲストはケント・ギルバートさんでした。

小林恵さんは「アメリカ生活文化ジャーナリスト」です。アメリカン・ライフスタイルを研究していらっしゃいます。キルトはもちろん、アンティークの収集家でもあります。著書もたくさんあります。 私は小林恵さんの大ファンで、何冊も本を持っています。「19世紀、節約精神から生まれたアメリカンフックド・ラグ」では、フックド・ラグについて。「手にハートを—愛の遺産‐アメリカの手作り」では、フックド・ラグをはじめアメリカの手作りについての歴史が書かれています。アメリカンクラフトが大好きな方にはオススメの2冊です。

ひととおり作品を見終えて帰ろうかと思いましたが、せっかくです。大画面のテレビの前にすわって、しっかりと2日分見てきました。1日目はラグの紹介、2日目はデザインから作り方まで。正直、ダビングしたビデオが欲しかったです。

作り方をメモってきましたので、ササッと紹介してみたいと思います。 まず用意するものは、ウールの布、麻の布。そして、かぎ針にフープ。かぎ針は専用のものがあるようですが、なければ太めのかぎ針(5〜6号)。

まず、ウールの布を5mm幅にカットしていきます。この時にあると便利なのがロータリーカッターと定規、カッティングマットです。

次に芯になる麻の布にマジックでデザインを描いていきます。デザインはむずかしく考えるものではなく、パッと思いつくものがいいそうです。ビデオでは丸いお盆の上にナイフとフォークとスプーンを並べたデザインでした。実際にそれらを並べてまわりの輪郭を描いていきます。これならば、私にもできるカモ?

麻の布にデザインを描いたら、ほつれてこないように出来上がり線に沿って、あらかじめミシンをかけておきます。カットはしないでそのままフープに張ります。そして、いよいよかぎ針でフックしていきます。

麻の布の上からかぎ針をさしてウールの布をひっかけます。引き上げたら、かぎ針を抜きます。これを繰り返していきます。ループの高さは5mmを目安にします。もちろん、高さが揃った方が奇麗です。

フックする時に気をつけなければいけないことが2つあります。ひとつは、ウールの布の始めと終わりは、必ず麻の布の上に引き上げることです。もうひとつは、目をとばさないようにすることです。表から見るとビッシリ埋まっているように見えても、裏に返してみるとすき間があったりします。

もし、すき間をみつけても大丈夫です。後からいくらでも埋めていくことができます。びっしり埋めれば埋めるほど、丈夫なラグが出来上がります。

フックをし終わったら、テープで縁を始末します。仕上げはタオルを2枚使って、ラグをサンドウィッチのようにはさんでスチームをあてます。最後に、ガムテープなどでゴミをとって出来上がりです。


さて、主役であるウールの布ですが、ビデオでは、着なくなってしまったウールの服地をリサイクルして使っていました。ウールならなんでもいいというわけではなく、縦糸が必ず通っていないとダメなようです。綾織りの布は不向きです。

縦糸が通っているかを知るには、布を裂いてみると分かります。ちょっとハサミを入れて、両手で思いっきり裂いてみます。ビリッ、ビリッと裂けたら縦に糸が通っているのでOKです。裂けなかったり、糸がほつれてくるようなものは、弱いので向いていないようです。

洋服だったころ?は、縮んでしまわないように、ぬるま湯で手洗いをしたりクリーニングにだしたりしていました。しかし、ラグに使う時は逆に目を詰まらせた方がいいようです。ビデオでは「ふかす」という表現を使っていました。驚いたことに、ニットも同様にして使えるということです。

今までにもネクタイをリサイクルしたキルト、ワイシャツをリサイクルしたキルト、着物をリサイクルしたキルトなどなど、上手に形をかえてリサイクルしたキルトをたくさん見てきました。今回はウールをリサイクルしたホックド・ラグ。

見ればすぐ影響されてしまう私ですが、こればかりは「さあ、私も!」というわけにはいきません。いつも「素晴らしい!」と感心するだけで終わってしまいます。簡単にリサイクルというけれど、私にとっては、なかなかむずかしい課題です。アイデアはもちろん「潔さ」がいります。

着なくなってしまった洋服などは、今まではフリーマーケットにだすか、それでも売れ残ったら資源ゴミとして処分していました。そんなウールの洋服の中に、ひょっとしたらフックド・ラグに使えるものがあるかもしれません。

使えそうな洋服があったら、それはそれでウレシイのですが、また押し入れにしまい込まないように、なんとか形にして、上手にリサイクルできたらと思います。

2001年02月09日

キルトカフェ 展示会のリポートです。
キルトカフェは2005年3月1日にオープンしました。