いちばん印象に残っているのが、「オール・ホワイト・キルト」と呼ばれるキルトです。「オール・ホワイト・キルト」は、トップが白い布1枚で作られているキルトのことをいいます。ひと針ひと針ていねいに縫われたキルティングにまずため息がでてしまいました。スタッフィング(またはトラプント)という技法を使い、さらに凹凸をだしていました。まわりにフリンジを使い豪華にしあげてあるものもありました。いつかは私も「オール・ホワイト・キルト」に挑戦してみたいと思わせる、そんなキルトでした。
つぎに印象に残っているのが、「紺と白のキルト」と「赤と白のキルト」です。展示会にいくと必ずといっていいほど、この配色のキルトがあります。私も大好きな配色です。
まずは「紺と白のキルト」ですが、紺色の布地は白いちいさなプリント模様が入っていて、日本の藍染を思いおこさせました。今回見たキルトのパターンはイングリッシュ・アイビーのものとサンフラワー・スターと呼ばれるパターンのものと2枚ありました。シンプルな配色だけにキルティングの美しさがきわだっていました。
つぎに「赤と白のキルト」です。何枚かありましたが、とくに印象に残っているのがプリンセス・フェザーと呼ばれるアップリケキルトです。白地の部分にキルティングが細かくしてあり、赤のプリンセス・フェザーのアップリケをみごとに浮きたたせていました。
アップリケキルトといえば他にも何枚かありました。シャロンのバラ、ローズリースなどです。これらは花をモチーフにしたもので、白地に緑とピンクまたは白地に緑と赤という配色が多いです。ここで注目したのがローズリースの花の部分でした。赤色の布地にギャザーを寄せてつくってあって、花びらの「くしゅくしゅした感じ」をだしていました。ルーシングと呼ばれる立体的に表現する技法だそうです。
最後は、白地に緑とピンクの配色のプリンセス・フェザーのアップリケキルトです。プリンセス・フェザーと呼ばれるこのパターンは、19世紀半ばころのペンシルバニア州で流行っていたそうです。緑とピンクの布地の上にシフォンがかぶせてあって、こんな技法もあるのかとその時は思っていましたが、目録の説明を読んでみると、修復するためにかぶせてあるのだと書いてあります。染料に含まれる鉄分の割合で激しく色が落ちてしまったようです。
いつの時も流行というものがあって、使われている布地や表現方法などを見ればいつ作られたかがおおよそわかるといいます。当時のくらしぶりがそのままキルトに反映されているわけです。キルトの歴史はアメリカの歴史を知るうえでも貴重な資料であることはまちがいありません。
私は、都内で開催されるこうしたキルト展をよく見にいきます。特にアンティークキルトが好きなので、タイトルにアンティークとついていると必ずといっていいほど見にいきます。それらは保存の状態によっては、黄ばんでいたりしみがついていたり色あせてしまったりしています。100年以上の昔に誰かが作って誰かが使っていたんだと思うと、なんだかいとおしくなります。
展示されている作品にふれることはできませんが、見るだけでじゅうぶんに感動をあじわうことができます。図録を買っておくと、こうしてページをめくるたびに何度でも感動がよみがえってきます。写真をながめるだけでなく、説明文もよく読んでみるとまたあらたな発見があります。「そうだったのか」とひとりつぶやきながら、気分をリフレッシュしてさらにキルトづくりにはげみたいと思います。
キルトジャパン1999年1月号・3月号に、「DAR美術館所蔵アンティークキルト展」に関する記事が掲載されています。
1999年04月09日
|